神話の里、島根県奥出雲に三百余年の歴史を刻む簸上清酒。この蔵の最大の功績は、今や全国の半数以上の蔵で使われる「泡無酵母」の発祥の地であることです。この発見は、安全で効率的な酒造りを可能にし、業界全体に大きな進歩をもたらしました。中国山地の鉄分を豊富に含んだ伏流水で醸す酒は、芯の通った深い味わいが特徴。代表銘柄「七冠馬」は、名馬シンボリルドルフに由来し、その力強さと華やかさで絶大な人気を誇ります。また、伝統の技が光る「簸上正宗」も健在。神話と伝説が息づく土地で、日本の酒造史に名を刻んだ由緒ある蔵元です。
創業は1712年(正徳2年)、江戸時代中期にまで遡ります。長く奥出雲の地で酒を醸してきましたが、その名が全国に轟いたのは1962年(昭和37年)。蔵で偶然発見された「泡の立たない酵母」が、国税庁醸造試験所の研究を経て「協会701号酵母」として全国に広まりました。これは、発酵管理を容易にし、生産性を飛躍的に向上させる画期的な発見でした。1910年(明治43年)には近隣の酒蔵と合併し法人化。三百年の伝統を守りつつ、日本の酒造技術の革新に大きく貢献した、輝かしい歴史を持つ蔵元です。
毎年3月中旬に開催される「蔵開き」や「新酒祭り」は日本酒好きには見逃せないイベントです。蔵の見学や限定酒の購入ができるまたとない機会で、神話とたたらの里である奥出雲の風土と、300年以上の伝統を肤で感じることができます。通常の蔵見学については事前にお電話でお問い合わせください。
全国新酒品評会やインターナショナルワインチャレンジ等での受賞歴を誇り、島根県新酒品評会の吃醸の部では首席の島根県知事賞を受賞。広島国税局清酒金評会では「吃醸」部門、「純米酒」部門でそれぞれ優等賞を獲得。「玉鋼」は全国新酒金評会で金賞を受賞し、梅酒品評会「日本酒梅酒」部門では銅賞を獲得しています。2017年には美木杌正杜氏が「現代の名工」として国から表彰されました。
島根県仁多郡奥出雲町横田1222番地